0から始める著作権

  このブログでは著作権について解説していきます。

著作物をどのように利用するか(2)

前回は、著作物の利用の許諾の話をしました。著作物を利用することについて、著作権者に有償で認めてもらう、という話でした。

この許諾は、著作物を利用したい人と、著作権者との間の契約です。この場合の契約はライセンス契約になります。ライセンスというのは利用許諾のことであり、利用許諾の契約だからライセンス契約になるのです。

 

そして、このライセンス契約では、著作物を利用する人が著作権者に金銭を支払うことになり、その金銭はライセンス料と言われます。もちろん、著作権者は無償で著作物の利用を許諾することもあります。この場合、ライセンス料は発生しません。また、契約ですので、様々な条件を契約の中に盛り込みます。例えば、イラスト(美術の著作物)の利用についてライセンス契約をするとき、著作物の利用期間(1年間だけの利用なのか数年間の利用なのか)、利用条件(1つのSNSに掲載するのか複数のSNSに掲載するのか)などの条件を決めて、それらを盛り込む必要があるのです。

でも、ここで皆さんは疑問に思うと思います。このようなライセンス契約はとても面倒ではないか、もっと簡単なわかりやすい方法で著作物を利用できないか、という疑問です。しかも、著作権者が無償で著作物の利用を許諾したい場合には、尚更簡単な方法がよいのではないか、と思うでしょう。これらはもっともな疑問です。

 

実は、このような疑問に応じて、著作権者が、自分の著作物を他人が利用できるかどうか、利用できるとしたらどのような条件で利用できるかどうかを簡単に示すためのマークが考案され、既にその表示が使われています。皆さんも見たことがあるかもしれません。以下に、2つの例を紹介します。

 

○ 文化庁の「自由利用マーク」

 文化庁のWebサイトによれば、「自由利用マーク」は、自分の著作物を他人に自由に使ってもらってよいと考える場合に、その意思を表示するためのマークです。例えば、「コピーOK」の文字が入ったマークがあり、このマークを著作物に付けておけば、他人は安心してその著作物を複製したり、無償配布できます。

 

○ クリエイティブ・コモンズのマーク

 クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのWebサイトによれば、このマークは、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません」という意思表示をするために、基本となる4種類の条件(組み合わせにより6種類になる)を定めて、どの条件になっているかを表示するためのマークです。作品がインターネット上で公開される場合に、検索されやすくなるようなメタデータも提案されています。

 

これらのマークについて詳しくお知りになりたい方は、文化庁のWebサイトや、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのWebサイトをご覧ください。

これらのマークは、主として、著作権者が無償で著作物の利用を他人に許諾したい場合に用いられています。

それでは、著作権者が、有償で著作物の利用を他人に許諾したい場合はどのようにすればよいでしょうか。例えば、イラストレーターが、自分の描いたイラストをWebサイトやSNSで公表して、有償でのイラストの利用を広く呼びかけるという方法があります。個人としてそれをやるのは大変ですので、そのような呼びかけを代行してくれるサービスもあります。

 

そして、イラストを見た側、イラストを利用したい側が、そのイラスト(美術の著作物)を利用するために、どのように著作権者を探し出し、どのように利用許諾について交渉し、どのような条件でライセンス契約をするか、という問題も重要になってきます。

次回は、この問題について、更に詳しく見ていきましょう。

 

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著作物をどのように利用するか(1)

前回まで、著作権には様々な種類があることを見てきました。そして、著作権は、著作者人格権と著作財産権に大きく分かれ、後者は他人に譲渡できることを知りました。

著作財産権を所有している人は、元々は著作物を創作した個人や法人(著作者)ですが、著作財産権は譲渡されることもあるので、その個人や法人が著作財産権を所有していない場合もあります。

そこで、実際に著作財産権を所有している人を「著作権者」と呼ぶことにします。もちろん、著作財産権を他人に譲渡していなければ、著作物を創作した個人や法人(著作者)が著作権者です。

 

著作権者は、著作財産権を所有しているので、複製権や公衆送信権などを持っています。例えば、あるイラストについての著作財産権を所有している著作権者は、そのイラストを複製したり、複製したものをWebサイトにアップロードして公衆に送信することができます。

もし貴方が、そのアップロードされたイラストを見て、自分のSNSに一定期間だけ載せたいと思っても、貴方は複製権や公衆送信権を持っていないので、イラストをSNSに載せることはできません。

勝手に載せたらどうなるでしょうか。その場合、複製権や公衆送信権を持っている著作権者からクレーム(警告)が来るかもしれません。そして、最悪の場合、著作権者から著作権侵害で訴えられるかもしれません。

それは困りますよね。ですので、イラストをSNSに勝手に載せる訳にはいかないのです。ではどうするか・・・

 

簡単に思い付く方法は、貴方がイラストの著作権者になる、という方法です。いま著作財産権を所有している著作権者から、その著作財産権を譲り受けるという方法です。しかし、1つのイラストだけ著作財産権を譲り受けるのは現実的ではなく、例えば、いま著作財産権を所有している著作権者が会社(法人)であれば、ビジネスライクに多くのイラストの著作財産権を貴方に売り付けてくるでしょう。

貴方は、1つのイラストをSNSに載せたいだけなのに、しかも一定期間だけ載せたいと考えているのに、話は大ごとになってしまいます。

 

このようなとき、とてもよい方法があります。

それは、著作権者に対して、イラスト(美術の著作物)をSNSに載せることについて、有償で認めてもらうという方法です。著作権者が持っている著作財産権はそのままとし、イラストをSNSに載せることについて、金銭を払うことによって著作権者に認めてもらうのです。この「認めてもらうこと」を法律用語で「許諾」と言います。

著作権法は、著作物を利用することについて、著作権者から利用の許諾を得ることができると定めています。

著作権者が著作物の利用の許諾にOKすれば、貴方はイラストを利用することができるのです。

さあ、貴方はイラストをSNSに載せることができます。でも、ここで注意しなければならない点があります。

貴方は、イラストを勝手に変更することはできないのです。例えば、イラストがつり目をした犬の顔であるとき、貴方が勝手にタレ目に変更することはできないのです。もしそれをすると、イラストの著作者の同一性保持権を侵害してしまうからです。

仮にイラストの著作者が他人に著作財産権を譲渡していた場合、その他人が著作権者になっていますが、同一性保持権は著作者に残っているので、著作者が持っている同一性保持権を侵害してしまうのです。

 

次回は、著作物の利用の許諾について、更に見ていきましょう。

 

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著作権の種類には何があるのか(9)

前回は、同一性保持権、公表権、氏名表示権の3つを紹介しました。これらは、著作者が他人に譲渡できない権利、すなわち、著作者に固有の権利でした。

著作者に固有ですので、著作者が他界した場合にはこれらの権利は消滅します。また、著作者が会社などの法人であれば、その法人が解散した場合に消滅します。

 

ただし、著作者が他界した後でも、その著作者が創作した著作物を他人が世に示すときに、著作物の同一性を損ねるようなことはしてはなりません。また、例えば、もし著作者が生前に日記を非公表のものとして書いていたら、他人が勝手にその日記を公表してはいけませんし、ある俳人(著作者)が生前に俳句には必ず氏名を表示するように決めていたら、他人は俳人の氏名付きでその俳句を世に示さなくてはなりません。

 

このように、著作権法は、著作者が他界した後でも、あたかも著作者が生きているかのような権利、著作者の人格を尊重するような権利を3つ定めているのです。

実は、著作権法は、同一性保持権、公表権、氏名表示権の3つを「著作者人格権」として括っています。

「~人格権」っていい言葉ですよね。Wikipediaによると、人格権 = 個人の人格的権利を保護するための権利、とのこと。個人が創作したものを尊重する著作権法ならではの命名です。

そして、この著作者人格権と区別するために、複製権や公衆送信権などの他人に譲渡できる著作権を「著作財産権」ということがあります。

 

さあ、著作者人格権と著作財産権を区別して、まとめてみましょう!

 

 

○ 著作者人格権

 ・同一性保持権

 ・公表権

 ・氏名表示権

 

○ 著作財産権

 ・複製権

 ・上演権

 ・演奏権

 ・上映権

 ・公衆送信権

 ・口述権

 ・展示権

 ・頒布権

 ・譲渡権

 ・貸与権

 ・二次的著作物を創作する権利(翻訳権、翻案権等)

 ・二次的著作物を利用する権利

 

まとまりました。ここまで読んでくれた皆さんに、著作権の全貌をお見せできることができました。

次回からは、また違った視点で著作権について見ていきたいと思います。

 

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著作権の種類には何があるのか(8)

前回は同一性保持権の話をしました。著作物の内容やタイトルが著作者の許可なしに他人が勝手に変えられないという権利でしたね。

この同一性保持権も他人に譲渡できるのでしょうか。

実は、著作権法は、同一性保持権は他人に譲渡できないと定めています。このことはとても重要です。

もし同一性保持権が著作者から他人に譲渡できてしまうと、この同一性保持権という権利の意義が失われてしまいます。何故なら、同一性保持権が著作者の手を離れてしまい、著作物について著作者のコントロールが効かなくなり、著作物がどんどんつくり変えられていくからです。

 

著作物を創作したのは著作者です。もし同一性保持権が著作者から他人Aに移って著作物が変えられ、その後他人Bに移ってまた変えられ、そして更に他人Cに移って、、となっていくと、最初の著作物のかたちは多分失われてしまうでしょう。

それは、著作物を創作するという人間の行為をおとしめることであり、創作をした著作者を侮辱するようなことであるといえます。

真摯に苦労して創作した著作物は、たとえ複製権が他人に移ったとしても、その他人が勝手につくり変えることはあってはならない。

著作権法は、著作者による著作物の「創作」に対して、最大の敬意を払っているのです。

法律の第1条にはその法律の目的が定められていることが多いです。著作権法の第1条の要点は次のとおりです。

 著作者の権利の保護を図って、文化の発展に役立てていく。

 

まずは、著作物を創作した著作者の権利を保護する。これが著作権法の最終目的(=文化の発展)を導きます。(著作権法第1条には、他の要点もありますが、それは後のブログで紹介します。)

同一性保持権という権利があるので、著作者は、自分が創ったものが他人によってつくり変えられることはないという安心感を得ます。著作者は安心して次々に著作物を創作して、その著作物についての複製権を他人に譲渡することができるのです。

 

したがって、著作権には、他人に譲渡できる複製権のような権利と、他人に譲渡できない同一性保持権のような権利がある、ということになります。

この区別はとても重要です。複製権のような譲渡できる権利は他にもありましたね。公衆送信権、二次的著作物を創作する権利、二次的著作物を利用する権利、展示権などでした。

他人に譲渡できない権利は同一性保持権の他にもあるのでしょうか。

 

著作権法は、他人に譲渡できない権利として、同一性保持権の他に、次の2つの権利を定めています。

 ○ 公表権   ~ 著作者が自分の著作物を公表するかしないかを自分で決められる権利

 ○ 氏名表示権 ~ 著作物を公表するときに、氏名を表示するかしないかを自分で決められる権利

         

そうすると、他人に譲渡できない権利、すなわち、著作者に固有の権利は、同一性保持権、公表権、氏名表示権の3つになります。

次回は、これまで出てきた幾つかの権利を分類して整理してみましょう。

 

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著作権の種類には何があるのか(7)

前回では、複製権などの著作権が、他人に譲渡することができるという話をしました。複製権などの著作権が、譲渡可能な権利である、すなわち、財産のような性格を持っているという話でした。

 

ところで、小説家などの著作者が、自分が創作した物を他人に譲渡した後に、その他人が創作物を勝手に作り変えてしまったとき、著作者はどう思うでしょうか。例えば、仮に貴方が小説家であるとして、貴方が書いた小説の複製権と公衆送信権をブロガーに譲渡し(二次的著作物を創作する権利は譲渡していないと仮定します)、ブロガーが小説の一部を改変してブログに掲載したとき、貴方はどう思うでしょうか。

いったん譲渡したのだから、ブロガーが小説の内容を改変しても構わないと思うでしょうか。でも、それが小説の最も重要な部分だったらどうでしょうか。ブロガーが貴方に無断で勝手にその重要部分を改変したことにきっと腹を立てることでしょう。それは当然のことです。小説の創作というのは相当困難なものであり、その重要部分の創作にどれだけの心血を注いだか、創作をした貴方以外の人は知る由もないからです。

 

実は、著作権法は、小説家のような著作者がそのような苦い思いをしないような権利を著作者に与えています。

それが「同一性保持権」です。同一性保持権は、小説の内容やタイトルが小説家の許可なしに勝手に他人が変えられないという権利です。これはとても重要な権利です。

 

この同一性保持権を小説家などの著作者が持っていることによって、著作者は安心して著作物を譲渡することができます。

例えば、もし貴方がイラストレーターだとして、この同一性保持権を持っていなかったら、貴方は自分が苦労して創作したイラストを安易に譲渡することはできません。譲渡した後に他人が何らかの意図を持って、そのイラストの一部を作り変えてしまうかもしれません。そしてその改変部分が、自分が最も大事だと考えているイラストの部分だったら、居ても立ってもいられなくなる・・・

譲渡したこと自体を悔やむことになります。そうすると、貴方はイラストを譲渡することにためらいを抱くことになってしまいます。

そのためらいを消し去るのが、この同一性保持権です。

私は、この同一性保持権の存在が、著作権法の最も素晴らしい点の一つであると考えています。

自分が苦労して創作した物について他人が勝手に書き変えることができないという同一性保持権は、他人の行為を制限するものであり、この他人の行動制限は、著作者が創作した物(著作物)に最大の敬意を払うものであって、著作者に独自の創作を促す要因になっているからです。

 

次回は、この同一性保持権の性質について更に考えていきましょう。

 

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著作権の種類には何があるのか(6)

前回と前々回で、複製権以外の著作権の種類を述べました。いろいろな権利がありましたね。

中でも、公衆送信権は、自分が創作した著作物について、自分だけがWebサイトにアップロードして公衆送信を行うことができるという権利であり、とても重要な権利でした。例えば、貴方が撮影した面白い動画について、貴方が動画配信サイトにその動画を投稿する場合、貴方が公衆送信権を持っているので、貴方だけがその動画を公衆に送信できるのです。公衆送信権を持っていない他人が、勝手に貴方の動画を公衆に送信できないのです。

 

また、二次的著作物を創作する権利と、二次的著作物を利用する権利の2つについて述べ、これらが元の小説や曲を創作した著作者(原著作者)にあることを述べました。

そして、二次的著作物の創作(翻訳、脚色、映画化、編曲など)を他人に任せる場合に、二次的著作物を創作する権利だけを譲渡するのか、二次的著作物を創作する権利と二次的著作物を利用する権利の2つとも譲渡するのか、決めておく必要があると述べました。

 

ここで気が付くことがあります。貴方が撮影した面白い動画についても、その動画の投稿を他人に任せることができる、ということです。仮に貴方が多忙な場合、自分の代わりに他人に動画投稿をしてもらったり、他人が運営するブログやSNSでその動画を紹介してもらうことができます。

その他人が、貴方が面白い動画を撮影することを知っていたら、貴方に対して最近撮影した面白い動画を自分のブログで紹介したいと申し出るでしょう。貴方が愛犬の可愛らしい動画を毎日撮影していることをその他人が知っていたら、是非ともブログで紹介したいと思う筈です。

でも、少し気になることもあります。例えば、その他人のブログが商用のブログであるとき、もしその動画のお陰でブログ視聴数がアップしたならば、その他人だけに利益がもたらされることになります。動画が有名になることは貴方にとって喜ばしいことですが、視聴数アップの利益の幾らかは貴方にあってもよさそうです。

 

実は、貴方が利益を得る方法があります。それは、貴方が、その動画の複製権と公衆送信権をその他人に有償で譲渡するという方法です。すなわち、他人に売り渡すことができるのです。

貴方が、その他人と交渉して、動画の複製権と公衆送信権を譲渡することについて、契約をすればよいのです。

(譲渡契約ではなく、動画(著作物)の利用を許諾するというライセンス契約もあるのですが、これについては後のブログで述べます。)

 

このように、前回と前々回で紹介した、二次的著作物を創作する権利、二次的著作物を利用する権利、複製権、公衆送信権は、他人に譲渡することができます。

小説、音楽、動画以外の著作物についても同様です。例えば、イラストレーターの方が、ブロガーの方に自分が書いたイラスト(美術の著作物)を譲渡することができます。そうすることによって、ブロガーの方は、自分が運営するブログにそのイラストを自由に掲載することができるのです。この場合も、イラストの複製権と公衆送信権を譲渡することになります。

 

また、他の著作権の種類についても同様です。例えば、イラストの場合、ブログに掲載するだけではなく、展示会を開いて展示することもできます。前々回のブログで、展示権という権利を紹介しました。ブロガーの方は、そのイラストについての展示権も譲渡して欲しいと、イラストレーターの方に頼むことができるのです。

どの種類の権利を(どのような条件で)譲渡するのかを契約書にしっかり書いておくことが必要になります。そうしないと、後々トラブルになってしまうおそれがあるのです。

 

したがって、著作権の種類を知ることと、譲渡をする権利が何であるのかを把握すること、そして、契約書に譲渡の内容や条件を書くことが重要になるのです。

 

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著作権の種類には何があるのか(5)

前回のブログで、「二次的著作物を創作する権利」と、「二次的著作物を利用する権利」を紹介しました。

この2つはとても重要です。この2つの権利が契約書に書かれておらず、トラブルになることもあるからです。

詳しく見てみましょう。

 

○ 二次的著作物を創作する権利

 ~ 二次的著作物を創作(翻訳、脚色、映画化、編曲等)する権利

 

貴方が小説を書いたとします。その小説を英語やフランス語などに翻訳する権利は、当然貴方が持っています。また、その小説を元にして演劇の脚本を書いたり、その小説を映画にする権利も、貴方が持っています。貴方が音楽作品を作曲した場合も同じです。その音楽作品(曲)を編曲する権利を貴方が持っています。

このように、貴方は、小説や曲を複製する権利(複製権)やWebサイトなどで公衆送信を行う権利(公衆送信権)のほかに、翻訳、脚色、映画化、編曲などをする権利を持っているのです。これが、二次的著作物を創作する権利です。

 

でも、小説を他の言語に翻訳するのは大変な作業です。プロの翻訳家の方に任せた方がよいでしょう。演劇の脚本を書いたり、映画化することも同じです。脚本家や映画製作会社にお任せした方がよいです。編曲についても、アレンジが得意な編曲家に任せるべきです。

そうすると、元の小説、元の曲(原著作物)を創作した人(原著作者)は、翻訳家、脚本家、映画製作会社、編曲家の方と契約して、翻訳、脚色、映画化、編曲する権利、すなわち二次的著作物を創作する権利を(有償で)譲ればよいことになります。

つまり、この二次的著作物を創作する権利は他人に譲渡できるので、プロに翻訳、脚色、映画化、編曲を任せればよいのです。翻訳家、脚本家、映画製作会社、編曲家の方も、小説(原作)や曲(原曲)を求めています。彼らとWin-Winの関係が成り立ちます。

 

 

でも、ここで気になることがあります。翻訳物、シナリオ、映画、編曲に対して、元々の小説や曲を創作した貴方が仮に何の権利も持っていない場合、他人がそれらを自由に使ってしまって、貴方には何の利益や報酬がもたらされないことになってしまいます。

もし、映画や編曲が当たって、映画製作会社や編曲家だけに収入があったときに、貴方はどう思うでしょうか。

そこで、著作権法は、元々の小説や曲を創作した貴方にも翻訳物、シナリオ、映画、編曲について権利を持っていることを定めています。それが、二次的著作物を利用する権利です。

 

○ 二次的著作物を利用する権利

 ~ 二次的著作物を創作した著作者(翻訳家、脚本家、映画製作会社、編曲家等)が、この権利を持っている。

   二次的著作物の元になっている小説や音楽などを創作した著作者(原著作者)も、この権利を持っている。

 

この二次的著作物を利用する権利によって、元々の小説や曲を創作した貴方も、何らかの利益や報酬が得られることとなります

元々の小説や曲を創作した貴方は原著作者と呼ばれます。原著作者である貴方は、翻訳家、脚本家、映画製作会社、編曲家に二次的著作物を創作する権利を譲渡しても、二次的著作物を利用する権利が残っているのです。

 

この二次的著作物を利用する権利も(有償で)譲渡することができます。ですので、翻訳、脚色、映画化、編曲を他人に任せる場合に、二次的著作物を創作する権利だけを譲渡するのか、二次的著作物を創作する権利と二次的著作物を利用する権利の2つとも譲渡するのか、決めておく必要があります。そのことを契約書に書いておくことが重要になるのです。

 

今回は、二次的著作物を創作する権利と、二次的著作物を利用する権利の2つを述べました。

小説家や作曲家の方は、これら2つの権利を知っておくことが、とてもとても大事です。

 

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